やけどはキャンプで起こりやすい事故の1つです。
この記事ではやけどについての知識を深め、応急処置方法についてまとめていきます。
私は急性期病院で5年半勤務後、現在は在宅医療の現場で看護師として働いています。
この記事を通してやけどについての知識や病院以外の場での処置方法について、皆さんに役立つ情報をお伝えできると嬉しいです!
まず結論から言うと、やけどは初期対応がとっても大切です。基本的な応急処置方法として、水で十分に冷やしたあとにワセリンをたっぷり塗って保湿、そして傷が露出しないようにサランラップで巻いたり、非固着性ガーゼ(あとで紹介します)の貼付を行います。
なお、広範囲のやけどや痛みの強いやけど、皮膚を全損しているようなやけどの場合は初期対応後すぐに病院を受診してくださいね!
それでは、初期対応の仕方と応急方法について詳しくまとめていきます。
火傷の基礎知識
やけどとは
火傷とは熱によって皮膚や生体が損傷した状態を言います。
火傷の種類は熱による温熱熱傷、体に電気が走ることによって起こる電撃傷、化学物質に触れることによって起こる化学熱傷、放射線暴露によって起こる放射線熱傷、高温の気体を吸い込むことによって起こる気道熱傷があります。
今回はキャンプでよく起こるであろう温熱熱傷の応急処置を取り上げていきます。
やけどの評価について
火傷の程度は受傷した面積や深さによって主にⅠ~Ⅲ度に分類されます。以下に簡単にまとめます。
- Ⅰ度熱傷は皮膚表面のやけどで赤くなる程度のヒリヒリ痛むやけど。治癒期間は数日で傷跡は残らない。
- Ⅱ度熱傷は水ぶくれ(水疱)が出来る痛みが強いやけど。さらに、やけどの深さによって浅達性(水疱底が赤色)、深達性(水疱底が白色)の二種類に分類される。治癒期間は1~4週間でやけどの深さによっては傷跡が残る。
- Ⅲ度熱傷は皮膚全層が破壊されており水ぶくれは出来ず、知覚神経も損傷されてるので痛みも感じないやけど。傷は白っぽかったり黒っぽかったりする。治癒期間は1か月以上。場合によっては植皮等の手術が必要。
注意して欲しいのは受傷した当日では熱傷の深さを正確に判断することが難しいということです。
熱源からすぐ離れたとしても細胞組織がダメージを受けているので、赤くなる程度のやけど(Ⅰ度熱傷)かなと思った翌日などに水ぶくれができている(Ⅱ度熱傷)こともあります。
火傷の初期対応、応急処置方法

- 流水でやけどした部分を十分に冷やす。目安は5分~30分。
- 赤くなる程度のやけどの場合はワセリン等の保湿剤を1日数回塗って保湿で経過観察。
水ぶくれができた場合は無理に破らず上からワセリンを塗ってサランラップで巻く。その上からガーゼなどを当てて保護。1日1回~2回程度洗浄、処置を行い清潔に保つ。
- 広範囲のやけどの場合は初期対応後すぐに病院を受診!
- 毎日、やけどした部分の皮膚の状態観察は必須。やけど部分や周囲に赤みや腫れ、痛みが強くなってくる場合や悪臭がする場合は感染を起こしている可能性があるため早めの病院受診が必要!
詳しく説明していきます。
まず患部を水で冷やす
流水でやけどした部位を十分冷やします。冷やす時間としては5分~30分が目安です。
冷やすことでやけどが深いところまで進行してしまうのを止め、痛みを和らげることができます。
衣服の上からやけどした場合は服を脱がずに衣服の上から水をかけて冷やします。これは服を脱ぐ際に、衣服の熱で別の場所をやけどしてしまったり、勢いよく服を脱いだ刺激で水ぶくれ等ダメージを受けた皮膚が破れて痛みが悪化したり傷の治りが遅くなったりするリスクがあるためです。
ポイントは水で冷やすこと!この時に氷水や保冷剤などを直接患部に当て冷やしすぎると組織損傷を助長させてしまい、凍傷になってしまうリスクがあります。
子供さんなど暴れて水で冷やせない場合や水が手元になく、やむを得ず氷や保冷剤を使用して患部を冷やす場合はそれらを直接患部に当てず、タオルやハンカチなどでワンクッション敷いてから当ててください。
そのまま何かで巻いて固定して冷やす場合は凍傷を起こしてないかこまめにやけど部分の観察を行ってくださいね。
また、体幹部のやけどや広範囲のやけどを冷やす場合は冷やしすぎて低体温になってしまうリスクがありますので冷やした後は毛布に身体をくるみ保温して下さいね。
Ⅰ度熱傷-赤くなるだけのやけどの場合
やけどの場所を毎日水で洗って清潔を保ちワセリン等を塗って保湿します。
Ⅰ度熱傷であれば、保湿での加療を行えば数日程度で傷跡を残さずきれいに治すことができます。
ちなみにですが、日焼けで皮膚が赤くヒリヒリすることってありますよね。あれはⅠ度熱傷になりますのでお風呂から上がった後しっかりと保湿をしてあげてください。
子供さんや肌が弱い方には↓のワセリン使用が安心かもしれません。
余談ですが、ワセリンって固形燃料にも使用できるそうですよ。処置にも使えて燃料にも使えてワセリンって万能すぎやしませんか。。500gを1つ常備して処置用と固形燃料用で分けるのもよさそうですね。
Ⅱ度熱傷-水疱(水ぶくれ)ができるやけどの場合
やけど部分を洗って清潔を保つのはⅠ度と変わりありません。
水ぶくれは無理に破らないように優しく洗ってくださいね。破れてしまった場合、薄皮は無理にはがす必要はありませんが簡単に取れそうであれば除去します。皮の下で細菌が繁殖して感染が起こるのを防ぐためです。
やけど部位にたっぷりめにワセリンを塗り食用ラップを巻きます。汁が出るようであればその上からガーゼを当ててください。
家で処置を継続する場合は上記処置を最低1日1回~数回行うようにしてください。ラップを使用することで傷口は密閉され、周囲の正常な皮膚も蒸れた状態になるのでかぶれてあせものような皮膚トラブルを起こすリスクがあるためです。
また、やけど部分や周囲が赤く腫れてきたり、痛みがどんどん強くなって来る場合や悪臭がする場合は傷口が感染を起こしている可能性があります。その時は早めに病院を受診してください。
もしキャンプ場でやけどした後にこの記事を読み、ワセリンが手元にないという方は十分に冷やした後はサランラップを巻くだけで大丈夫です。
私が使ってる処置物品紹介
処置で食用ラップを巻くのはちょっと・・・と抵抗がある方には、私が仕事でも使用しているメロリンガーゼというガーゼを紹介しておきます。

このガーゼは非固着性ガーゼとなっており従来のガーゼのように傷口に張りつかないようになっているのでガーゼ除去時に痛みを伴ったり、ガーゼと一緒にくっついた皮膚が剥がれてしまうことがありません。
また水疱(水ぶくれ)が破れて汁が出てきてしまった場合もガーゼが吸ってくれるので衣類が汚れたりすることもなく安心です。ラップのように空気を通さないわけではないので傷周りの皮膚の蒸れも予防できあせもやその他の皮膚トラブル予防にもなります。
その他の切り傷や擦り傷の処置にも使えますので1セット購入して常備しておくと何かと便利ですよ♬
非固着ガーゼ使用時の処置方法は食用ラップ使用時と一緒で、優しく水で洗った後にやけど部位またはガーゼにワセリンを塗布し包帯やテープなどで固定します。交換頻度は同じで1日1回~数回行ってくださいね。毎日の皮膚状況の観察も必須です。
Ⅲ度熱傷はすぐ病院へ!
Ⅲ度熱傷になると皮膚の組織が全て損傷され、皮下組織まで到達したやけどになります。そこまでいくと知覚神経も損傷されているので痛みは感じません。
痛みを感じないからといって放置は危険ですのですぐに病院を受診し処置を受けてください。深さによっては植皮などの手術が必要になる場合があります。
よくある疑問Q&A

思いつく限りの疑問について回答していきます。

消毒はしなくていいの?
基本的に傷の消毒は不要です。私たちが子供の頃の治療といえば傷は消毒するのが当たり前でしたが、現代医療では傷を不必要に消毒したりしません。
理由は、消毒液は殺菌作用もありますが傷を治そうとする細胞組織まで破壊してしまうため傷の治りが遅くなるためです。菌の繁殖を抑えるためには消毒ではなく毎日流水で洗いましょう。
オロナインも主成分がクロルヘキシジングルコン酸塩という殺菌・消毒成分なので塗る必要はありません。ちなみに、アロエも傷に良いという説がありますがそれも不要です。

処置に使える野草とか薬草はある?
野草や薬草は何の雑菌がついているかわからないので傷口に塗るのは危険です。
土の中に潜んでいる破傷風菌を傷口に入れることになりかねないのでやめましょう。

洗うのは何を使って洗えばいい?
基本的には水やぬるま湯でOKです。石けんやボディーソープ、洗顔等を使って洗っても問題はありません。その際はよく泡立てて、泡で優しく洗ってください。そして泡が残っていると傷の治りが遅くなったりしてしまうのできちんと洗い流してくださいね。

やけどに冷えピタを貼って冷やしていい?
火傷(やけど)の応急処置には使用しないでください。
火傷の応急処置としては、まず火傷の患部をしっかり冷やすことが必要です。
冷やし方としては、流水で冷やすのが良いと言われています。
「熱さまシート」など冷却シートはジェルに含まれる水分が蒸発するときに気化熱を奪って皮膚温を下げますので、じわじわと冷やします。そのため火傷には適しません。
また火傷は皮膚表面がダメージを受けていますので、熱さまシートを貼ることはできません。
小林製薬熱さまシートに関するQ&Aより引用
やけどに熱さまシートは使用しないように言われています。やけどは流水や冷やしたタオル等で冷やすようにしましょう。

やけどの痛みはいつまで続く?和らげる方法はある?
やけどの痛みは通常数日でおさまります。
やけどは空気に触れないと痛みが和らぐ場合があります。その場合はワセリンなどを塗った後に食用ラップなどで巻くと良いですよ。冷やした方が痛みが軽減する場合もありますのでその際は保護した上から冷やしてあげてください。
またロキソニンやバファリンなどもやけどの痛みに効果があると言われています。

傷にはすぐにキズパワーパッドや絆創膏を貼ったほうがいい?
やけど後、すぐに上記製品を傷口に貼って蓋をしてしまうのはあまりおすすめしません。理由は傷ができたばかりの頃は傷から出てくる汁(浸出液)の量も多く感染を起こすリスクがあるためです。
受傷後1~2日は、毎日水で洗って毎日ワセリン+ガーゼ等の貼り換えを行い、汁の量が落ち着き感染がないことを確認してからキズパワーパッドの貼付をおススメします。
キズパワーパッド貼付の場合は汁(浸出液)の量が多い場合は1~2日ごとに交換するか、一旦非固着性ガーゼでの処置に戻すといいでしょう。そのほうが交換しやすいですしね。
やけどの傷を綺麗に治したい場合、保湿が重要になってきますので絆創膏を貼るにしても絆創膏のガーゼ部分にワセリンを乗せてから貼付し、毎日交換するといいでしょう。
まとめ
やけどはキャンプでよく起こるトラブルの1つです。
初期対応がやけどの重症度に影響を与え、処置方法が皮膚の傷の治りの早さやどれだけ傷跡を綺麗に治すかに影響してきます。
正しい応急処置方法を理解して万が一に備えていきましょう!
また、キャンプに行く際は保険証を忘れずに持っていき、キャンプ場近くで救急対応できる病院がどこにあるかを把握しておくと安心です!ちなみにやけどの治療は形成外科または皮膚科領域になります。
最後に、この記事は初期対応についてまとめたものです。痛みが強かったり広範囲のやけどに関しては無理に自分で治そうとせずに救急車を呼んだり、早めに病院を受診してくださいね!
万が一にしっかり備えてキャンプを楽しみましょう♪
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