キャンプで傷の大小はあれど、切り傷や擦り傷、やけどなど何かしらの怪我をしてしまうことは多いです。
ファミリーキャンパーさんであれば子供のケガはキャンプに限らずしょっちゅうだと思います。
考えてみると私が子供の頃にやっていた傷の治療といえば、傷口を洗って消毒薬を塗ってガーゼや絆創膏を貼って汁を吸収し傷を乾燥させる。
そして、かさぶたができたらOK!みたいな感じでした。
かさぶたが痒いし気になって気になって、いつ剥がそうか・・まだ早いよな・・なんて考えながら、綺麗に剥がれた時には嬉しかったりしたものです。笑
そんな怪我の思い出話はさておき、実は現代の傷治療の基本はその頃とは全く変わっている!という話を今日はしていきます。
私は普段、訪問看護師として働いているので家で様々な傷の処置をおこなっています。
擦り傷や切り傷、やけど、床ずれまでほとんどの傷を湿潤療法で治療します。
傷は水できれいに洗うだけで消毒せずに適度な湿潤環境作りかさぶたを作らず治す。
そんな治療方法、湿潤療法について詳しく解説していきます。
【この記事を読むメリット】
- 従来おこなっていた傷口の消毒と乾燥がなぜダメなのかを知ることが出来る。
- 傷を痛くなく早く綺麗に治す湿潤療法の方法について知ることが出来る。
ちょっとした知識があれば簡単に実践できますし子供から大人まで使える治療法ですのでぜひ最後まで読んでいってくださいね♪
なお、この湿潤療法の適応は感染を起こしていない綺麗な傷であることが前提です。
傷が感染を起こしている目安は、傷やその周囲の痛みが増したり、赤く腫れて熱を持っていたり膿んでいる状態です。
感染を起こしている可能性のある傷や汚染がひどい場所での怪我、何かに噛まれた等の場合は、湿潤療法の適応ではなく感染を抑えることが優先なので速やかに病院を受診して診察を受けてくださいね。
湿潤療法とは人が本来持っている自己治癒能力を最大限に生かす治療法
湿潤療法を一言でいうと、傷口を水(水道水or飲料水)で綺麗に洗い流したあと、傷が適度にジュクジュクした環境を保つ治療です。
近年ではモイストヒーリングだったりうるおい療法と呼ばれたりもします。
日本皮膚科学会の創傷・褥瘡・熱傷ガイドラインにも記載されている化学的根拠のある治療です。
キズパワーパッドなどのハイドロコロイド製剤もこの湿潤療法を利用した治療になります。
湿潤療法では人間が本来持っている自己治癒能力を最大限に活かし、痛くなく、早く、きれいに傷を治すことができます。
従来の治療法と違う点
- 傷は消毒しない
- 傷は乾かさない
傷は水で洗うのみで消毒をしない、傷を乾かさないという点がこれまでの傷治療と異なります。
消毒薬は傷口を殺菌しますがその効果は一時的です。
そして、消毒薬を使うことで病原菌だけでなく傷口にいる傷を治そうとする細胞や感染を防ぐための常在菌にもダメージを与えてしまいます。
また、怪我をすると傷から汁(浸出液ともいいます)が出てきますよね。
この汁には傷を治そうとする成分がたくさん含まれており、これらの成分は適度に湿った環境で増殖・活性化します。
ガーゼを当ててしまうとその成分が吸い取られ、乾燥してしまうので傷の治りが遅くなり、傷跡も残ってしまいます。
湿潤療法はこれらの事実をふまえ、傷を消毒しない・乾かさないことが基本になっています。
今まで消毒薬がしみるのが痛かったり、絆創膏やガーゼが傷口に張りつき交換が痛かった思い出があると思いますがこの湿潤療法ではその痛みともおさらばできます(*^^)v
湿潤療法の方法を詳しく解説
湿潤療法のやりかたについてまとめていきます。
- 傷口は水(水道水or飲料水)できれいに洗い汚れを落とす
- 消毒しない
- 傷が乾かないように非固着性ガーゼやハイドロコロイド製剤を当てて保護する
詳しく説明していきます。
傷口は水できれいに洗う
擦り傷、切り傷、やけどすべての傷に共通ですが止血確認後、水で傷口周辺含めてきれいに洗います。
見える泥や砂、汚れなど異物がある場合は綺麗に洗い流してください。
基本的に水で洗い流すだけで良いですが、石鹸など使用する場合はよく泡立てて優しく洗ってください。泡はきちんと洗い流しましょう。
使用する水は水道水や飲料水を使ってください。川の水などは不純物が混ざっているため感染症を引き起こすリスクがあります。
やむを得ず川の水や井戸水などを使う場合は浄水器などを使うといいでしょう。
ガラス片や木片などが傷口に深く刺さって取れない場合は無理して取らずに病院を受診してくださいね。
消毒しない
先にも書きましたが消毒薬は一時的な殺菌効果のみで全ての病原菌をなくすことは不可能です。
むしろ消毒薬を使うことで病原菌が体内に入ることを防ぐような良い常在菌たちにもダメージを与えてしまったり、傷を治そうとする細胞組織までダメージを与えてしまうので傷口はよっぽどのことがない限り消毒はしません。
消毒をしない代わりに水でしっかりと傷口を洗い綺麗にするだけで十分です。
汚い釘を踏んでしまった、すごく汚染された場所で怪我をしたという場合は水で洗浄後、速やかに病院を受診し医師判断のもとで消毒をおこなったり抗生物質の内服を行います。
傷が乾燥しないように保護する
傷口を綺麗に洗い流した後は傷口にワセリンを塗ります。ワセリンを塗る事で傷口が乾燥せず、傷を適度に湿らせた環境を作り出してくれます。
ワセリンを塗った後は上からラップを巻くか非固着性ガーゼ(皮膚にくっつかないガーゼの事です)を当ててテープや包帯で固定してください。
これでキズパワーパッド等の製品を使ったときと同じ環境を作り出すことが出来ます。
非固着性ガーゼは、私は仕事でメロリンガーゼというものを利用しています。救急セットに入れておくと何かと処置に使えて便利なのでおすすめです♪
その他の方法としてはハイドロコロイド製剤と呼ばれるキズパワーパッドやケアリーヴなどを使うと、傷口を適度に湿った環境を作り出してくれるため傷が綺麗に早く治ります。
どの方法にせよ、傷がしっかり綺麗であることを確認した後に処置を行うことが大切です。
汚れが残っていると傷口で細菌が繁殖し感染が起きるリスクがあるためです。
貼りっぱなしにせず、汁の量に応じて毎日〜数日ごとに交換してくださいね。
まとめ
キャンプで起こる大抵の擦り傷や切り傷、やけど傷は湿潤療法で対応可能なのでまとめてみました。
医療従事者にとって湿潤療法は割と当たり前の治療法ですが、日本では2001年以降に徐々に浸透してきたものなので特に30代前後以降の人には馴染みのない治療法だったかなと思います。
湿潤療法は従来の治療法よりも痛くないし、早く綺麗にキズを治すことが出来るので知ってて損はないです!
しかしケガや病気全てに共通して言えることですが、無理して自分で治そうとせず何かおかしいなと感じる場合は病院を受診して医師の診察を受けてくださいね。
キャンプでよくあるトラブル、やけどの基本知識や応急処置方法についてもわかりやすくまとめていますので興味がある方は読んでみてください。
皆さんが安心安全にキャンプが楽しめますように(*^^)v
今後も看護師視点で色々なキャンプトラブルの対処法について少しずつブログでまとめていきますのでまた遊びに来てください♪
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